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「3 人様?」の続きです。
真面目になる時もあるのです。
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ふわりと宙に浮いた自分の足を見て、私は思わず悲鳴を上げた。
少しずつだが徐々に上昇していき気を取られてしまう。
しかし、ハッと我に返り奴の方へ視線を投げると思わず息を飲んでしまった。

ヤンキーじゃないかと思われる姿でいるのだが、不思議にそう見えない。
足元には地から這い上がった青白い線で描かれた魔方陣、手には見たこともない眩いオーラを放ち、空気中で操り見たこともない文字を書き上げる。
私にも聞こえないほど小さな声で唱える言葉はまるで・・・天使からの囁きのよう・・・。

私が奴を見ていることに気がついたのか、『奴』はふっと笑う。



「どうだ?これをかけたのはお前が一番最初だ、有り難く思えよ?」
「・・・・・・。」
「なーに変な顔してやがるんだよ。
 ホラ!お前は神様を虐めた悪い奴なんだから思いっきり夜更ししようぜ!」



足元を見ればもう自分のあの大きな家も小さくなり
『奴』も翼が無いのにふっと空を飛び私を追い越した。
そして少々苛立ったような荒い口調で言い、手を差し伸べてきた。

でも本当は・・・凄く照れくさいんだろうね、『奴』は。



「あのさ。」
「何だ?」



私は『奴』の手を握った時、同時に私の口が開いた。
ずっと聞きたかったこと、でもずっと聞けなかったことを・・・。



「何で『神様』は私の家に来た訳?」
「一番不幸せな奴の家に訪問するのが好きなんだよ、『神様』は。」
「うん・・・?これじゃ話が違うよね?」
「お前が聞きたい答えはそれじゃないはずだ。」



『俺』は、ずっと前からお前が気に入ったから来たんだ。



奴の声は澄んだ空気に美しく響き、私は思わず赤面してしまった。
何故・・・?何でそう言われるだけで私は・・・私は・・・。



「俺は最も気紛れな神様なんだ。
 面白いと思った奴の家に入り込んでは、つまらないと思った瞬間出て行く。」
「私もさ、面白い神様だとは思うよ?
 オムライスしか達人並に作れないし、洗濯機は回せないし、ヤンキーに見えるし。」



私は高鳴る感情を抑えようと必死に笑い、対抗するようにと奴に言う。
すると奴も微笑む。何だか、楽しんでいるようにも見えるし無理矢理のようにも見えた。
それは背景に映る青白い満月の光のせいか、それは分からない。
宙に浮いた私たちの髪を風がもてあそび、そうしては去って行った。
まるでそれは・・・。



「でもな、昨日からここに来たのは他にも理由があるんだ。」
「・・・そうなの?」



私が首を傾げると、奴は初めて真剣な顔をしては戸惑った色が見えた。
神様が戸惑うってよっぽどのことだ。いつもはあんな呑気にしていた奴が・・・。



「師匠から宿題を出されて来た、気に入った人を・・・
 運命を大きく変えたいと思うほど気に入った人を笑顔にするようにと。」
「・・・・・・。」



私は驚きと嬉しさと戸惑いと、その他諸々の気持ちが一気に胸へと詰まる。
何故・・・?何でそう言われるだけで私は・・・私は・・・。
神様は私の頬を手で優しく撫で、そして照れくさそうに笑った。



「馬鹿・・・じゃな・・・。」



もう、最後の言葉は言葉にならずに波の様に歪んだ。





→「終 私の神様?」へ
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空乃 鴉
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これでも学生。
趣味は絵や小説を書くこと。

嫌な事が目の前にあるとネタの神様が降臨します。神様の存在はコレしか信じられない駄目人間←
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[01/07 結音]
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