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少女と吸血鬼が魔女に会うお話の続きです。
何だか・・・まともにバトル物を書いたのは初めてな気が・・・。
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少女と吸血鬼が魔女に会うお話の続きです。
何だか・・・まともにバトル物を書いたのは初めてな気が・・・。
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草原が広がる、その中に堂々と天に枝を飾る木が一本。
ここは昔、街で賑わっている時に待ち合わせされる場所として有名であった。
しかし地から魔物が湧き出た時に滅ぼされたと言う・・・。
そして残ったのがこの木・・・魔物からも大切にされている珍しいものであった。
ギルドから紹介された依頼では、達成条件と言うものがそれぞれ存在する。
町で騒ぎが起こりそうであれば町の人々を守りつつ。
お使いであれば追加注文を聞くことしばしば。
そしてこの・・・魔女狩りでは・・・。
『木を守りながら戦え』
ヴェンが剣を鞘から開放する仕草は滅多にないことである。
特にこのような個人での依頼の時には、大体素手で魔物を蹴散らすか、巧みに避けて敵同士自滅させるかぐらいにしか行わない。
いつも共に居る・・・ジェドすらこの少女の剣術は滅多に見ないと言う・・・。
見たとしても、ただ錆びないよう剣に手入れしているところぐらいしか見ていないか・・・。
バランスが崩れるのではないかと思われる腰につけている太い長剣、
今ヴェンの手で鞘から開放され、白銀のよう美しく刃が光った。
その長剣に、細く小さく刻まれた線を見てジェドでも思わず息を飲んだ。
それから理解した・・・何故この少女・・・いや、「相棒」は剣を滅多に使わないのかを・・・。
「ジェドが知りたがっていたことを今教えてあげるよ。」
「・・・・・・。」
「ウフフ・・・面白い子ね・・・。」
女性は再び気味悪く笑い、そして両手を天へ吊るされているかのように大きく広げ上げた。
指が徐々に細く長くなっていき骨となり、更に手の甲は灼熱の炎で溶かされたように垂れていき、指と指の間に薄い膜を作っていく・・・。そしてその手は赤い翼となっていった。
魔女が変身・・・いや、魔女の魔法が溶けていくのだ。
竜が人間などに変身することは容易い、そのことを一瞬で理解していたヴェンは、女性に・・・いや、竜に哀れに思うような眼差しを向けた。そして手に持つ剣も何処か・・・悲しげに光った。
ヴェンが持つその剣は・・・
かつて幻の武器と呼ばれていたはずの『ドラゴン・キラー』だった・・・。
何故この相棒が・・・いや、少女が今この剣を手にしているのだろうか?
「いくら私でも、竜にまで勝てるとか己惚れてないわよ。」
まるでジェドが考えている事を、疑問に思えたことを察したかのように、ヴェンは苦笑しながら答えた。
しかしコレはあくまでも話は続けているはずなのだが、どうも心を読まれているようにしか聞こえない・・・のはきっと、相棒であるヴァンパイアだけであろう。
醜く、だが紅く鮮やかな色を持つウロコに包まれた竜が息を一吹き。
巨大な肺から吹き出された空気は灼熱の炎のように熱く、ヴェンの額に汗が滲むほどであった。
目を合わせた瞬間・・・。
お互いは残像のみ残し消えた!
しかしこれは人間の肉眼ではそう見えるだけであり
ジェドが睨む目はしっかりと姿を捉えていた。
長剣を手にしているにも関わらず
馬鹿にならないほどの動きで竜からの攻撃を見切り回避する。
そしてジェドは我に返り、手を合わせ何かを呟き始めた。
『それなりの実力はあるようね、貴方。』
「お姉ちゃん、相手は私だけじゃないのよ?」
竜は肺の中が限界になるまで息を吸い込み
ヴェンを狙いこの場のシンボルごと焼き尽くそうと青い炎を吐き出した。
その時ほぼ同時にジェドの口はピタリと止まり、秘めた力がヴェンを包み込んだ。
それから青い炎に巻き込まれても動きは鈍らず、むしろチャンスを見つけて目指すようにヴェンは走り強く地を蹴った。太陽の光で反射した正体をいち早く見破った竜は、翼を使って更に空へと上がり、身を操れないヴェンを太い尾で叩きつけた。
その衝撃で地に叩きつけられると無論、即死に間違いないがそんな脆くは無い。
まるで何事も無かったかのようにヴェンは空中でバランスを上手く取り、己が持つ能力を手から開放する。それはジェドでもよく目にしている、浮遊の力であった。
華麗に着陸したヴェンは、仕事からか彼女の手強さからか、無邪気な笑みを浮かべていた。
「やっぱり竜って強いねぇ、わくわくしてきちゃった。」
「呑気に笑っている場合か・・・。」
ジェドは呆れながらそう冷たく言うと、ヴェンはチョロッと舌を見せた。
しかしそれも刹那の様・・・。
メリハリつけることだけは大の得意であるヴェンは、直ぐに敵の方を見やっては目付きを鋭くした。細く微笑む竜も何処か楽しそうである。しかしだからと言い、和解などする訳も無く手加減などもする訳ない。
焼きつく野原・・・もとい戦場の中、またもや戦火が舞い上がり炎は激しく天を焦がした。
『聖火を見ると・・・昔を思い出すわ。』
そう竜は呟くとそっと天を仰いだ後、視線をヴェンへ移し素早く羽ばたいた。
突進するかと思いきや、竜はヴェンが手にする剣に向かい鋭い牙を向けた。
「・・・っ!?」
「ヴェン!」
思わぬ反撃にヴェンは目を丸くし
そして必死に『ドラゴン・キラー』を抜こうと力付くで引き抜こうとした。
しかし竜の顎の力が勝り、ビクともせずに銀の刃は静かに悲鳴を上げた。
ジェドは危険を察し、直ぐ援護する体勢に入り再び手に気を溜め始める。
『貴方、昔私が食らった人と同じことをしているのよ。』
「・・・・・・。」
『同じクルスで、多分貴方は知っているのではありません?』
「興味は・・・な・・・っ!」
ヴェンは歯軋りをしながら必死に己の剣を引き抜こうとしていたが、竜の顎が緩むはずもない。むしろ引き抜く力を入れる度に、ギシギシと嫌な音を立てていく・・・。
このままでは間違いなくブレイクする・・・だが抵抗してもビクともせず、むしろ金属が軋む音が響く度に焦りを覚えた。
その背後で・・・影が潜んだ!
気配に気がついていたよう、竜は剣を捕らえたまま巨大な尾で振り払う。
しかし、その瞬間激しい痛みに襲われ思わず顎の力を緩め、代わりに肺から青白いの炎を吹き出した。
ヴェンはその隙を逃さず、『ドラゴン・キラー』を引き抜き3歩退く。
竜の尾は真っ二つに切り裂かれ、その傷口からは容赦なく吹き出す紅い液体が見えた。
その影・・・それは先ほど呪文を唱えていたヴァンパイアの姿があった。
普段はいつも、漆黒の衣に隠されているはずの手が変形し、朱色のオーラに包まれた剣となっている。これはジェドが得意とする力の一つ・・・ウェルポンチェンジ(武器変形)と言う術である。
先ほどヴェンが放った忠告を脳内から離れていたのか、竜はハッとして悲しそうに空を仰いだ。
そうだ・・・確か昔も・・・このように魔物に切り裂かれた記憶がある・・・。
目の前にいる少女ほど小さくはなかったが、昔、20前後の青年を襲った時・・・。
見事肉も引き裂かれ、しかし命は奪わなかった、救ってくれた・・・。
その名前は今でもはっきりと脳に刻まれている。
今でも・・・元気にいてくれているかしら・・・?
ロベルト・・・。
「あのさぁ・・・ジェド・・・。」
「なんだ?」
すっきりとした顔でいるかと思いきや、何処か機嫌悪そうに顔をしかめてヴェンは問う。
その様子に疑問を抱きながらジェドは振り返り立ち止まる。
「ロベルトから薦められた依頼なのは分かっているけどさ・・・。」
「途切れさせないでストレートに言ったらどうだ?ヴェン。」
その言葉にむっとしたのか、更に機嫌悪そうな顔をして
半分八つ当たりを含めた声でヴェンは言った。
「『この依頼をしてきた人』って誰なのさ?」
「・・・・・・。」
その問いについにジェドの口までもが閉じられてしまった。
そして・・・己への呆れは飛び、全ての怒りが例の者に向けられた。
「ロベルトーッ!!!!!」
『約束の場所』では今日も・・・竜の咆哮が響き渡っていた・・・。
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空乃 鴉
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自己紹介:
これでも学生。
趣味は絵や小説を書くこと。
嫌な事が目の前にあるとネタの神様が降臨します。神様の存在はコレしか信じられない駄目人間←
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