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お久しぶりの海竜物語!第4話です。
時間が空いたことがバレバレな文・・・;
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誰が誰かでなくなった時
貴方が貴方でなくなった時
多分私は戸惑うでしょう・・・まだ・・・心が弱いから・・・





 海竜物語 ~4話 似~





まさかとは思った。何もかもが回り始める・・・私はそう感じた。
出会ってはいけなかったのかもしれない・・・そうだ、この騎士には・・・。
夢から覚めた貴方は気がついていないでしょう。私は貴方を・・・。



「真人・・・じゃないわよね・・・?」



私がそう呟いた瞬間、まるで時が止まってしまったかのように人は動かなくなった。
エンジニアと言われている男から静かに驚く声が漏れ、傍に居る科学者も失言してしまった。
そして・・・今目の前にいる騎士も・・・。

薄く丈夫に出来ている銀色の鎧を身に付け、そして純白なマントを羽織っている彼の顔は・・・紛れも無く私がいた世界で友達となっていた、あの真人であった。
しかしまるで自分の存在を否定するように、彼は首を振り冷たく言った。



「残念だが、真人はこの世に居ないよ。」

「え・・・?」

「俺は真人じゃないし、真人はこの世から消えて無くなった。」



彼はまるで機械のように言い放った言葉で私の心を切り裂いた。
心もまるで人間のよう・・・血を吹き出す代わりに涙を吹き出し、その反動で私はその場で膝をついた。



「マーシュ・・・少し言いすぎじゃ・・・っ!」

「誰も分かっちゃいねぇ、何で奴は狂い暗殺実行までと向かった・・・!?」

「そんなの知る訳ねぇだろ!大体双子の縁を切ったんだからその話を持ち出すんじゃねぇ!」



ジャスティスは私に気を使うようにと庇いに来たが、理解出来ない話で苛立ち怒声を撒き散らし合っている。すぐさま止めようと脳内には区切ったものの、先ほどのショックから足が震え立ち上がることさえも出来ない。

耳に入る怒り狂った声はズキズキと頭に響き、思わず呻き声を漏らした。
するとクロウはすっと私の横を通り、無言でマーシュの近くまで歩み寄っていった。



「クロ・・・ウッ!!!」

「女の子を泣かせるとはいい度胸じゃないですか、マーシュ?」



彼の名前を呼んだのも束の間、その瞬間マーシュは喉の奥から低く唸った。
よく見ればクロウの拳が固く握られ、怒りを込めたようにマーシュの腹へと入れたのだ。
それを見ていた私とジャスティスは、あまりの不意の出来事にただ唖然とする・・・。

クロウは気を失いグッタリとした騎士に肩を貸し、私の方へ顔だけを向けた。
足が歩む先は巨大な船であり、彼の表情は優しい笑みとなって頷く。
それは私を誘う為か、それとも安心させる為の笑みなのかは分からない・・・。



それに続いてなのか、今度はジャスティスが私の下へ来て手を差し伸べてきた。



「ゴメンな・・・、何か訳分からん話を持ち出しちゃってさ。」

「・・・貴方が謝ることないじゃない、私こそゴメン・・・。」



ジャスティスは少々困惑した表情を浮かべつつ頬を掻くが、私は首を振り手を握る。
私は船の中へと手を引かれ、足を踏み入れた甲板は体重に反応したように軋む音が響いた。
しかしその音も不思議に不快を感じない、むしろ懐かしい音に聞こえた。

歯車か、蒸気やら何やらの音が微かだが聞こえ、思わず私は振り向く。



「どうした?船に乗るのは初めてとか・・・?」

「うん、初めてって言うことは本当だけど・・・何か懐かしいのよ。」

「ほぅ?」

「今年初めて海を見たと言うのに、その時も懐かしい感じがしたし・・・。」



うるさく動き出す数々の機械を見つめ、私は暫く無言でいた。
きっと汗を掻いている、乗船客の為に一生懸命に動いているのだろう。



何故だろう?どこから来るのかこの気持ちは・・・。



「ジャスティス、カレン、何をしているのですか?」

「あー、今すぐ行くから!」



ジャスティスは少々嬉しそうな声を上げながらも、そのままで私に急かす声もかけずに居た。
私は振り返り、視界に入った紺色の髪をした海賊に笑いかけた。
そしてその笑顔に返すかのように優しく微笑む。



「やっぱり・・・会ったことがあるかもしれないな。カレン。」

「よく分からないけど・・・これからは仲間としてよろしくね。」



吹き出す蒸気と笛の音は居場所を教えるように空へ轟き、船は震えた。
再び青年に手を引かれ、向かった先は・・・。





水飛沫も弾き出す、とてもとても美しい、空色の階段だった。

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空乃 鴉
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これでも学生。
趣味は絵や小説を書くこと。

嫌な事が目の前にあるとネタの神様が降臨します。神様の存在はコレしか信じられない駄目人間←
コメント
[01/07 結音]
material by:=ポカポカ色=
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