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空乃鴉が運営するブログサイト。ノベル中心。
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神と死神に関するお話、続けるの面倒なので続きません。
暴力表現などが苦手な方は今すぐ引き返して下さい。
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それはとても素敵な夜であった。
月は「食らって下さい」と言わんばかりに自らの輝き出せる光を見せて
そして星は月の身代わりになろうと必死に注意を逸らそうとしている。
そんな空が怯える夜が好きであった。

確か・・・私を殺そうとしていた人が亡くなった日も、こんな夜空であった。



『君の心臓を抉り取れば、私は神と成れる。』

『神の心臓は君の心臓のこと、自分のことすら知らなかったのかね?』



精神が狂い闇に染まったその人は、私がよく知る人でもあった。
よく知ると言うと、私の父。父は私の命を狙っていたことになる。
何故この様になってしまったのか、それは私にも分からない。

ギラリ光るナイフを取り出し、太い指が並んだ手で私の首を乱暴につかんだ。
脳へ達する血液の逃げ場がなくなり、首にある血管が驚いたようにビクンッと振るわせた。
徐々に意識が遠くなり、声もかすれて助けを求めるにも出来ない。
酸素を求め暴れ狂う心臓を守る胸の皮膚に、鋭い刃が入り込んだ時だった。



―――ガキンッ!



金属同士がぶつかり合う音が響き、その後に突然襲う衝撃波に私は突き飛ばされる。
握られた手から解放された首を私は押さえ、激しく咳き込んだ。



『だ・・・誰だ貴様は!』



父が怒声を上げ、私しかいないはずの空間に響く。
するとふと風が通り、そして薄暗い闇から誰かが現れた。

漆黒の衣を纏い、血は通っているのだろうか・・・?驚くほど白い顔に紅い瞳をしていた。
しかし何よりも、鮮やかな口紅が塗られている、人形のような顔に息を飲んだ。



『私は名も無き死神であり・・・神へ手を出す者は私が許さない。』

『死神・・・だとぉ?』



父は間抜けた声を上げ、鋭い目で睨みつけた。
だが確かに、私を庇う人は死神・・・。本でよく読むような、円状となっている刃物を持っている。
先ほどの金属がぶつかった音がしたのも、この鎌と言うもので弾いたからなのだろう。



『神の心臓を手にした者は哀れな姿となる、それを知らぬ者に殺されては困る。』

『何訳の分からんことを言っている!そいつは私の息子だ!』

『・・・どうやら、お前は私の餌となりたいようだな。』



怒鳴る父に死神は呆れたのか溜め息を吐き、鎌を振り上げた。
それを合図と見たのか、父は紅い液体がついたナイフを持って死神へと突進してきた。
だが死神は何一つ慌てず、目を細めて父を見下ろしていた。

そして私の方へ向き、唇を動かした。



『貴方の命は、必ず私どもめがお守りいたします。』



そう言い微笑むと、死神はキリッと目付きを鋭くして姿を消した。
空気に溶けたように消え、刃物は肉体を捕らえられずに彷徨う。
しかしその瞬間にその刃物は天へ弾かれ、分厚い罠にかかりピクリとも動かなくなった。

罠にかかった刃物は自由になり、父の掌には何も無くなった。
そして石像のように動かなくなった父の背後に、彼女・・・死神がいた。



『・・・あ・・・あ・・・。』

『・・・!』



父の武器が無くなったことに安心した瞬間、私の胸が突如悲鳴を上げた。
皮膚が裂かれ、鼓動を打つ度にドクドクと赤い液体が溢れ出す・・・。
私はずっと気をとられて痛みを忘れていた。

しかし何故なのか・・・苦しむ裏腹に怒りの感情が込み上がってくる。
それはまるで、もう一人の私がいるかのように肉体は勝手に動き出した。
手を開き、流れる空気から作り出し手にする物体。

取り出したのはあの死神と同じ・・・黒く大きな鎌であった。
それも羽のように軽い・・・まるで紙のオモチャでも持った感覚である。



『息子よ・・・父である私を殺すつもりな・・・』

『黙れ!私の命を奪おうとする者など親の愛でもある訳無い!!』



どうやら私の心には、もう一つの人格が眠っていたらしい。
その人格は目に映る者全てを、この手にする巨大な鎌で首を、心臓を狩る。
そんな恐ろしい人格と死神の女性は知り合いであるらしい・・・。



『オイ、後でもう一人の人格の奴を手当てしてやってくれ。』



私は自分の声でない声で、死神の女性へと言い放った。
死神はコクリと頷き、しかしいかにも楽しそうに口元に笑みをこぼしていた。



『分かっています、あの方は貴方よりもよっぽど儚いと言う事ぐらい・・・。』

『ならいい。』



月が歌った、紅く照らしラプソディを並べ。
星は次々に光を絶やした、怯えるように・・・。
その日、私の町はこの一夜で血の海へと変え、命の温かさは全て失った。

ただ・・・私は独りとはならなかった。
死神もいる、もう一人の私もいるのだから・・・。



「何か考え事ですか?」

「・・・いや、ただ昔のことを思い出して・・・ね。」



怯える夜の下で、今日も私はラプソディを囁くように歌った・・・。
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空乃 鴉
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これでも学生。
趣味は絵や小説を書くこと。

嫌な事が目の前にあるとネタの神様が降臨します。神様の存在はコレしか信じられない駄目人間←
コメント
[01/07 結音]
material by:=ポカポカ色=
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