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空乃鴉が運営するブログサイト。ノベル中心。
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海竜物語第2話。
クロウの後をついていく時の出来事。
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君は何を手に入れたんだい?
俺は失ったものばかりさ。
だから君が手に入れたものを俺に頂戴?





 海竜物語 ~2話 影~





「あの男と関わらない方がいい。」



それは突然の忠告であった。それもまだあまり話したことの無い人から告げられた事。
その時は放課後の掃除の時間、たまたま彼女と同じ場所へ担当していた。
私は思わず疑問の声を漏らし、するとまた繰り返し同じことを言ってきた。



「だから、あの男と関わらない方がいい。」

「あの・・・稲城さんが言っている事がよく分からないんですけど・・・。」



漆黒の髪を束ねたポニーテールにきりりとした目付き、無表情であるが噂では結構男子に人気らしい・・・。
彼女は稲城 優喜(いなぎ ゆうき)と言う名前で、私と同じクラスの成績優秀者である。
凛とした声が響き、私はその内容に唖然として素直に聞いた。
彼女は手にするほうきを何も気にせずに、止めず隅に潜む埃を掃いていた。



「神藤のこと、あいつ貴方を狙ってこの学校に来たのよ。」

「狙う・・・?」

「恋愛とかの意味じゃなくて、殺人的な意味で。
  まぁ信じられないなら無理に信じなくてもいいけど。」

「・・・・・・。」



稲城さんはまるで諦めたように微笑んで言った。
どうかと言うと私はその時、忠告した内容よりも忠告した人物に驚いていた。
何故稲城さんからその忠告が出たのか?私とは何も繋がりは無いはずなのに・・・。

そう・・・友人と言う繋がりさえも・・・。

その後は私は何も聞かず、稲城さんからも何も言う事はなくなった。









日光で反射し、目が痛むほど輝く水色の砂浜を歩き、30分ほど経っただろうか?
いい加減頭がクラクラしてきた頃に、クロウは振り返った。

そして海の向こう側へと指を指し、ニッコリ微笑む。
私は何かと思い、その彼が指で示す場所を見ようと目を凝らした。
するとうっすらと見える、陽炎を通してでの視界であるが・・・太陽を捕らえるかのように天へ伸びる太い棒と、その先には三角の旗がついていた。



「見えますか?あれが私の船です。」

「えぇ・・・船ってあんなに大きいの・・・!?」

「そりゃ、国から頂いた船なので。」

「・・・へ?」



私は思わず自分の耳を疑った。「頂いた」と言う言葉は、実は2つの意味を持っている。
一つは、国の誰かから褒め称えられて貰った意味を持ち。
そしてもう一つは、簡単に言えば奪うと言う意味がある。
ただ私は勘違いをして前者の方を勝手に思い込んでしまい、驚いたのだ。

するとまるで心を見通したかのように、クロウは少し苦笑いをした。



「面白い子ですねぇ貴方は・・・。」

「な・・・何よ?」

「私たちは『海賊』ですよ?そんな名誉を頂くような綺麗な存在ではありません。」

「か・・・海賊っ!?」



私は思わず声を上げ、それに気がつくと自分の口を慌てて押さえた。
「無人島なのに人気を気にするとは」とクロウはクスリと笑った。
じゃあ海賊だから・・・あの船は奪ってきたって言う事!?

しかしクロウもクロウで平然とした顔してて・・・実は海賊と言われてもピンと来ない。
それはきっと言葉遣いからだと思われるが・・・私は唖然としていた。



「まぁ、私たちの仲間は変わり者が多いのですけどね。」

「変わり者って一体どんな人が・・・?」

「私は科学の追放者、リーダーは国を裏切った騎士、その騎士の相棒のエンジニア。
  エンジニアは武器を作ったり料理作ったり、何でも出来たりするんです。」

「へぇ・・・愉快そうね。」



クロウからの説明を聞いている内に、何故か私の顔に笑みが浮かんだ。
一体どんな海賊なのか会ってみたいという気持ちが高鳴る。
その様子を見たクロウはニッコリと微笑み、また私の手を取った。

船が待ち構える場所へ、浜の砂を踏んで歩いていくその足は実に軽い。
何だかここに来て、私が私で無くなった気がする・・・。

それに・・・頭に浮かぶのは聞いたことが無いのに懐かしく感じる名前・・・。



(マーシュにジャス・・・。)



果たしてこの名前はどの人物に使われているのか予想も出来ないが・・・。
確か私が小さい時に遊んでもらった時の記憶にある。
しかし男に囲まれて遊んでいたとは苦笑する感じもするが・・・。

視界に広がるのは、徐々に大きくなっていく船の陰と旗に捕らわれていく海のように青い空。
それはまるで、冒険の一説にある旅の始まりのような光景を描いていた。





そして知らず映ったのは影は船から、空からと2つの影であった・・・。




 
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空乃 鴉
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これでも学生。
趣味は絵や小説を書くこと。

嫌な事が目の前にあるとネタの神様が降臨します。神様の存在はコレしか信じられない駄目人間←
コメント
[01/07 結音]
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