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少女と吸血鬼が魔女に会うお話です。
予想以上に長くなりそうだったので、(前)としてお送りします;;
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『約束の場所』

そう実際名付けられた場所に少女はいた。その少女はまだ10代行くか行かないか・・・。
とても幼いのにも関わらず似合わない巨大な剣を腰にかけている少女は、この場を訪れていた。

燃え上がるような長く紅い髪をゴムで結び、こぼれる前髪から覗かせる漆黒の瞳を持つ。
どこからどう見てもまだ子供であり、しかしどこからか女性と言えるオーラも出ている。



「本当にこの場所で合っているの、ジェド?」



誰も居ないのにも関わらず少女は口を開き
客観的に見たらただの独り言のようにしか見えないだろう・・・。
しかし、少女の『隣』にはいるのだ・・・『彼』が・・・。

少女はメモ用紙らしき小さな紙に再び目を通して溜め息を吐いた。
今回の依頼は燃やされるゴミとなるか、それとも報酬と化するのかさえ疑い出した少女であるが・・・。
その考えを読み取ったかのように、ジェドと呼ばれた者は口を開いた。



「魔女が住んでいると言うのは信じられないと思うが・・・。」

「だったらこの依頼はスカなのでは?」



少女はうんざりしたような表情に変え、ジェドと呼ばれる者を睨む。
よく見れば彼はあからさまに人間と思わせぬ姿をしており、しかし少女は彼をまるで下僕のように扱う。
人間と思えないほど血が通っているかもすら怪しい白い肌、それにちらりと見える鋭い牙が印象付ける。
高級そうな漆黒の布に、その布で隠す蝙蝠のような翼は一目で魔物と思わせてきた。

そう・・・魔物界では代表する有名人のヴァンパイアであった。
ジェドは少々含み笑いで少女を見下ろし言う。



「ヴェン、その依頼を薦めてきたのはロベルトだと言う事を忘れたか?」

「うっ・・・そういえば・・・。」



少女はそう言われて急に声を詰まらせた。
その後に再び、依頼の内容らしきものが書かれている紙に目をやる。

ロベルト・・・その者は少女が所属する『ギルド』で最大の権利を持つ者と言っていい。
近くの住人、いや、わざわざ困ったことを解決して貰おうと三千里越えて依頼する者もいる。
その依頼をされたことをそれぞれ・・・ギルドに所属する人に勧めていくのがその、ロベルトと言う者の仕事なのだが・・・。

「彼が言った事は絶対」
そんなことがギルドの中では言われているのだ。



「確かにロベルトが紹介してきたのは全部報酬に替えられたけどさ・・・。」

「一体その疑いは何処からくるんだ。」

「だって今回は別でしょ、竜に化けることが出来る高度な魔法を覚えている魔女なんて。」

「だがヴェン、もし竜に会えるのであれば、それはそれで面白い話だろう?」



ジェドは含み笑いで言うと、ヴェンと呼ばれた少女は更に機嫌が悪そうな表情へと替えていった。
第一、お伽話のような存在は年の割には信用していないヴェンなのだ。
悪魔の存在が今、ゴミのように散らばっていることから、ヴァンパイアの存在は認めているらしいが・・・。しかし流石に、もう幾千年に失われた竜と変化する者など・・・。



「あら?貴方たちは・・・?」

「・・・?」



背後から不意に声がかかり、ヴェンはギクリとして慌てて振り返った。
すると後に見たジェドも関心したように口笛を吹く。

声をかけたのは白い肌に白いワンピース・・・更に言えばレース付きの白い帽子を身につけている。
麦色の髪の筋が一本一本長く綺麗に流れており、大げさに言えば天使の様な女性だった。
どこかの花畑に居ても違和感など全く感じられないだろう・・・しかし何故、女性はこの場に来たのか。

少々放心状態になっていたヴェンは、意識を戻すように首を振る。



「あ・・・あの、私たちはここに魔女が住んでるって聞いてきたのですが・・・。」

「あら・・・。」



女性は水を零すような声を漏らし、後に小さく首を傾げた。
驚いた表情でもあるが、不思議そうな顔でもある・・・そう言われてヴェンもつられて首を傾げた。



「私も魔女だけど・・・この辺りはとても多いわ。」

「じゃあ、竜に変身する方は?」

「・・・・・・」



ヴェンは質問を重ね、流石に女性はその問いに答えることは出来なかった。
その時、ヴェンの背後で話を聞いていたジェドは気が付いた。・・・いるのだ。
それも、ヴェンの問いは確かに間違えている。竜に変身する者は・・・確かにここにいない。

女性が首を振ると手詰まりを感じ、表情を曇らせたヴェンの方を軽く叩いた。
そしてジェドは、脳裏にだけ会話を飛ばした。

するとヴェンは不意に冴えたようにハッと顔を上げ、腰にかけている剣に手をつけた。



「お姉ちゃん・・・ゴメンね?」

「・・・・・・貴方。」



女性の顔が青ざめると思いきや、平然とした顔をしてじっとヴェンの巨大な剣を見つめていた。
このような運命になると、彼女自身も察していたのだろう。
しかし湧き上る闘志を抑えることなど出来ず、女性は口元に人が変わったような、不気味な笑みを浮かべた。



「人間が竜になれなくとも、竜は人間になれるのよ。」

「お姉ちゃんゴメンね、これも・・・『クルス(剣の舞)』の仕事なの。」



今日の依頼は・・・。
『竜となる魔女を狩る』と言う内容であった・・・。





【魔女(後)へ続く】
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これでも学生。
趣味は絵や小説を書くこと。

嫌な事が目の前にあるとネタの神様が降臨します。神様の存在はコレしか信じられない駄目人間←
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[01/07 結音]
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