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少年と青年のお話。子供と騎士のお話です。
いつか続きものを書きたいのですが・・・。
いつもの様ネタがないので短編ぶち込みものです。(ぁ
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歌が聞こえた、それはとても美しい歌で。
雲が流れてた、それはとても綺麗な雲で。
僕を守ってくれた人がつかみ取ろうと、手を伸ばしていた。

神聖そうな白いマントに、太陽の光が反射し銀色に輝く鎧。
それはこの世界では極普通の騎士に見えるけど、僕にとっては特別だ。
でも言っても誰も信じてくれない、彼は血の雨が降る中助けてくれたのだと。



「ラルフお兄ちゃん!」



僕が叫ぶと、彼は振り返った。
赤かかった綺麗な金髪でエメラルドの瞳を持つ、これもまた普通の人にしか見えない。
だけど・・・僕にとっては特別なのだ、彼の全てが。

彼は僕の顔を見ると少し呆れた色が浮かんだが
それは直ぐにそれは嬉しそうな表情へと変わった。



「今日も授業を放り投げて来たのか。」

「えへへ、だってラルフお兄ちゃんと遊んでいる方が楽しいもん。」



静かな風が吹く丘の上まで僕は駆けて行った。
緑豊かな木々に丘を裂いて流れている川に囲まれているこの場所は、彼のお気に入りの場所でもあった。
いつも丘の上にある大きな黒い岩に座って、崖の下にある街、街の中心にある教会、そしてそれ全てを見守る太陽と青い空、全てをまるで楽しそうに眺めている。
僕はその楽しそうな表情が好きだった。



立派なマントをしているのに普通だと皆は言う。
立派な国章をつけているのに普通だと皆は言う。
立派な剣も、立派な鎧も皆みんな・・・。

でも彼は気にしないで、むしろ悔しそうな顔せずに笑って言うんだ。



『ロイ、俺はお前が思っているほど強くないし優しくも無いんだぜ?』



そう言われたのは、僕の傷が癒えてからだった。
でも僕の傷が癒えても、彼の体の傷は癒えていなかった。



この前までは、このような美しい街など見ることが出来なかった。
どこを見ても家は炎の手に包まれ、どこを見ても赤い液体に火柱。
銃弾や戦車が車のように行き交う激しい戦場であったのだ。

無論・・・僕もこの場に放り投げられた内の一人であった・・・。

両親は燃え上がる家から出てこない、弟が狂ったように泣き叫ぶ声が響き渡る。
だけど僕は足が竦んでしまい、何も出来ずにいた・・・。
何とかして家族に手を差し伸べたかったのに結局・・・何も出来ずにいた。

弟の叫び声はピタリと止み、その後間もなく両親の叫び声が響き渡った。
まるでそれで一家の塊であるかのように・・・。
僕は知らず知らずに1つの川を作った。嗚呼・・・愛しい人は愛してくれていたはずなのに。
生きる道を捨てようと、愛されたいと思って火に身を投げようとした時だった。



『オイッ!そこの子供!』

『!?』



顔も知らぬ人が僕に強く呼びかけた。見ると先ほど叫んだ人以外にも、沢山の兵隊を連れながら・・・。
手にはライフル銃があり、まるで僕を猛獣のような扱いされた様である。
今にも引き金を引きそうなそんな状態で・・・。



『お前の名前はロイと言う奴か?』



僕はあまりの唐突な質問に思わずビクリと体を震わせた。
何故僕の名前を知っているのか、頷きたいところであったが不思議に頷いてはいけない気がした。



『名を名乗れ!』



詰め寄る兵隊に、僕は金縛りに遭ったよう何も出来ず、ただただガタガタと震える事しか出来なかった。
反射的にしゃがみこみ、頭を抑えた瞬間時は止まった感じがした・・・。

薄目を開けてみれば迫ってきていたはずの兵隊は誰一人立っておらず、代わりに一人だけ黒い影となり現れた。
僕は唖然としたまま眺め、戦場で作られた砂埃の中から徐々にはっきりと見えるようになった。

それが・・・・・・。



「ロイ、お前お勉強しなくていいのか?」



騎士は僕の顔を見て溜め息混じりに聞いてきた。
僕の中ではとても優しくて強い騎士であって、でも彼は強くも優しくも無いと言う。



「いいの、お兄ちゃんといられるんだったら許してくれるはずだよ。」

「(っと言いながら怒られるのは俺なんだけどなぁ・・・)
 お勉強しないと、また兵隊さんに囲まれるぜ?」

「どうせ明日からラルフお兄ちゃんが旅に行っちゃうんだから。」

「・・・・・・どうしてそれを。」



彼はまるで僕にだけは知られたくないような顔をして、困った表情を浮かべた。



「もし今日兵隊さんが来ても、ラルフお兄ちゃんがいるから大丈夫!」

「おいおい、次は敵わない相手だったらどうするんだよ。」



彼はまだ困った顔をして僕に言う。
一つだけ、彼の誤った言葉に僕は強くお説教をしようとしたけど止めた。
ラルフお兄ちゃん・・・僕が言う強いは力のことじゃないんだよ・・・?



「・・・ロイ、明日はちゃんと、お勉強するんだぞ?」

「うん!」

「・・・あと、明日は絶対に泣かないこと、約束出来るか?」

「うん!」

「・・・旅先から手紙送ってやるから、それまで言葉の勉強をしておくんだぞ?」

「本当!?分かった!!」



僕は彼からの最後の約束に、あまりの嬉しさに思わず彼を抱きしめた。
明日泣かないと約束するのであれば、今日は構わないんだよね・・・?
僕を守ってくれた、一番立派な騎士さん。



「・・・っ!?ロイ・・・?」



彼はあまりの不意な出来事に驚き、だけどとても落ち着いたような声で問いかけた。
でも僕は無視するんだ、今口にしたら「行かないで」って言いそうだったから・・・。



「・・・仕方ないなぁ。」










『  ロイへ

 おはよう、ロイ。
 きっとお前が目覚めた頃には俺はこの街から姿を消しているだろう。
 きっといつもいた俺のお気に入りの丘からも姿を消しているだろう。
 だけどな、お前の心から見る丘からは見えるはずだ。
 今は少し旅に出るだけであり、用が済んだらまた「帰ってくる」よ。

 あの誰もが投げ出された闇の中で、正直出会いがあるとは思わなかった。
 誰もが絶望に思えるあの空間の中では全て傷を負うことしか考えていなかった。
 あの時、俺もお前に出会わなければ下の世界で彷徨っていたに違いない。



 昨日お前は疲れ果てるまで泣き叫んでいて、俺はそこで伝える事が出来なかった。
 だから、初めてのこの手紙から言わせてもらいたい。
 だがいつか、また帰って来た時にまた・・・伝えるつもりでいるから。

 俺の味方にしてくれて、ありがとう・・・。



  ラルフより』
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空乃 鴉
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これでも学生。
趣味は絵や小説を書くこと。

嫌な事が目の前にあるとネタの神様が降臨します。神様の存在はコレしか信じられない駄目人間←
コメント
[01/07 結音]
material by:=ポカポカ色=
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